インド北部のガルワール地方には、ヒンドゥー教徒が一度は訪れたいという巡礼地が点在している。なかでもヤムノートリー川の源流ヤムノートリー、ガンジス川の源であるガンゴトリ、シヴァ神の聖地ケダルナート、ヴィシュヌ神を祀るバドリナートは四大聖地とされ、今も巡礼者が絶えない。インドの人々が一生に一度は行ってみたいと願っている所。それぞれの寺院は、自らの足で聖地にたどり着いたサドゥー(修行僧)や敬虔なヒンドゥー教徒達で賑わっている。

ヤムノートリー』は、太陽神スーリヤの娘と言われると言われる聖河ヤムナーがバンダルプーイチ峰(6317m)の西から流れ始める所。ヤムナーは、川の浄化力と生産力を女神として崇拝する考えから、ガンガーと共に高い地位を与えられている河神。ヤムナーの源流は、ガンガーの源流と50kmしか離れていないが、2つの川は、アラハーバードのサンガムで初めて合流する。

ガンゴトリ』は、「ガンガーの降下」の意味。バギーラタ王にちなんでバキラディ川と呼ばれているガンガの上流はるか、ヒマラヤの奥深い谷間の標高3048mの地点。女神ガンガの寺院の周りを、小さなバザールとアーシュラムや巡礼宿が囲んでいる。
ガンゴトリの由来−バギーラタ王は、先祖供養のために天界を流れるガンガの浄水を求めて祈りと苦行を続けた。それを受け入れた女神ガンガは、地上に降りることを承知したが、世界を破壊してしまうことを恐れてためらった。王はさらに苦行を続けてシバ神の助けを借りて、ガンガをシバの髪に一旦受け止めてから地上に流した。

ケダルナート』は、ゴウリクンドから14kmを歩いてたどり着く。背後に壁のように雪峰がそびえ、石造りのケダルナート寺院と小さなバザールがある。寺院内には、自然石のリンガがご神体として祭られている。このリンガはインド全土で12柱あるジョーティル・リンガの1つ。
マハーバータの物語では、大戦争の後パーンダヴァ5兄弟は師や親戚を殺した罪滅ぼしのため、シバ神に会うように仙人に指示を受け北に向かう。しかし、シバ神は大罪を犯した兄弟には会いたがらず姿を隠した。シバ神は牛に変身し牧草地に身を隠していたが彼らについに見つかってしまう。彼らの気持ちを知り大罪を許したシバ神を讃えて作られたのがケダルナート寺院。

バドリナート』は、ガンガの支流アラクナンダ川の谷をさかのぼった所にある聖地。標高は3133m、両側の斜面は厳しく、轟々と流れる川岸に寺院と小さなバザールがある。奥の山間からは、ニルカンタが白い姿を見せている。バドリナート寺院にはヴィシュヌ神が祭られており、その顔のない黒い神像に、人は自分の信じる神を見るとも言われている。
寺院の由来−ここには昔、ヴィシュヌ神自信がいて仙人に仕えていたが、ヴィシュヌ神が地上に降りようとすると、仙人たちはヴィシュヌ神を引き留めた。困ったヴィシュヌ神が自分の代わりに像を残すことを約束した。仙人達はその言葉にしたがって、アラクナンダ川に沈んでいた像を引き上げ、これを神として寺院を建造した。